この項目は、依頼者様と音楽家が気持ちよく取引するためのガイドラインです。

今回は特に、料金に焦点を当てています。

 

私は依頼者様と音楽家は対等であるべきだと思っています。

 

ですが、どうも世の中にはスムーズとは言い難い交渉や契約が多いように思います。

 

原因はどうも双方にあるようです。

 

音楽家がどのように仕事をしているのか想像できない依頼者を責める声を多くききます。

しかし、それと同様に、自分の仕事の仕組みをわかりやすく説明できない音楽家の責任も大きいと感じます。

 

そこで、このガイドラインを書きました。

 

交渉・契約が少しでもスムーズになれば幸いです。

また、本ガイドラインに改善の提案をいただける場合は、お気軽にご連絡ください。

 


音楽家へ依頼の際のガイドライン

音楽家に支払われるべき料金は、基本的には『報酬+必要経費』です。

この二つをきっちりと分けて考えることが大事です。混同してはいけません。

まずは報酬について整理します。

 

A. 報酬について

報酬は、演奏や作曲に対する対価です。

ではその金額はどのくらいが適当なのでしょうか?

考え方のカギは二つです。それは『時給計算』と『付加価値』です。

 

~時給計算による報酬~

まずは時給です。

お仕事ですから時給や最低賃金の考え方は必要です。

ちなみに、全国の最低賃金はこちらで確認できます。

もちろん、最低賃金で考える必要はありません。

双方が妥当と考えるラインの時給を想定すれば良いでしょう。

ところで、一つの仕事に対して、どれくらいの労働時間が発生しているのでしょうか?

労働時間の例を下に示します。

 

【演奏の場合の労働時間】
・本番の演奏時間
・当日およびリハーサルの待機時間間 
・当日以外のリハーサル、打ち合わせに必要な時間
・長距離移動の場合、移動にかかる時間 
・演奏曲の練習時間(特に曲指定のある場合)

【作曲の場合の労働時間】
・全体構成の検討時間
・作曲に要する時間
・楽譜浄書に要する時間(楽譜が必要な場合のみ)
・デモ音源制作時間(デモ音源が必要な場合のみ)

 

以上の労働時間が発生します。

思っていたよりも多かったでしょうか?

意外にも依頼者だけでなく、音楽家もこれら全てを労働時間だと考えていない方が多いようです。

しかし、上記をきちんと労働時間と捉えておかないと、健全ではありませんし、仕事が長続きしません。

ちなみに、それぞれの項目に何時間(何日間)必要なのかは、案件によって異なるのでここでは控えます。

まずは上記の考え方で、労働時間に見合った最低限の報酬は支払われるべきです。

 

 

~付加価値評価による報酬

大げさなタイトルですが、要するにボーナスです。

時給計算では評価しきれない業績に対する報酬です。

『時給計算による報酬』以外にも、以下の付加価値に応じた報酬が支払われるべきでしょう。

 

【演奏の場合の付加価値】
・本番演奏
・演奏企画 (プログラム構成など) 
・その他、依頼者の期待以上の事柄 

【作曲の場合の付加価値】
・作品の品質
・仕様の指定による付加価値
・その他、依頼者の期待以上の事柄 

 

以上が付加価値として評価する対象です。

演奏家の場合、本番演奏は極端な集中力が要求されます。

そのため、通常の時給計算のみで収めることには無理があります。

演奏品質の良さ(またはその期待)と併せ、付加価値として評価すべきです。

作曲の場合、作品の品質以外にも、依頼時の特殊仕様指定により付加価値が発生することもあります。

また、演奏、作曲に限らず、その人物自体にネームバリューがある場合は、それも付加価値として評価されます。

 

 

 

B. 必要経費について

報酬以外にも必要経費の支払も必要です。

交通費が一番想像しやすいかもしれませんが、案件に応じて多種多様な経費が発生します。

以下に例を示します。

 

【必要経費の例】※演奏の場合
・往復交通費(当日、リハーサル、打ち合わせ) 
・楽譜等購入費(曲の指定があった場合)
・弦など消耗品の交換代 
・楽器等運搬、輸送にかかる費用
・リハーサル会場費
・その他、案件毎に必要な経費

 

これら経費は、演奏者が立て替え支払をすることがほとんどです。

支払がないと、演奏者がそのまま負担することになってしまいます。

細かい部分まですべて列挙して計算する必要はないかもしれません。

しかし、一つの案件にどれくらいの経費がかかっているのか、演奏者・依頼者ともに認識しておく必要があります。

 

 


 

以上となります。

繰り返しになりますが、音楽家には『報酬+必要経費』が支払われるべきです。

音楽家も依頼者も、この二つをきっちりと分けて考えることが大事です。

 

と、ここまで書いておきながらですが、私自身、このガイドラインを無視して仕事を受けることもあります。

実際に、5年ほど前の記事にも「時には無償で受けることもある」と書いています。

作曲についても、実質無料で受けたこともあります。(『作曲委嘱無料』は実現できるのか?

 

ですが、基本は飽くまでここに書いたガイドラインにあり、無償などの事例は例外として扱うべきでしょう。

 

音楽家と依頼者の皆様の双方が気持ちよく、交渉・取引できることを祈っております。