音の深みと重み

コンクールというと、みなさんは何を思い浮かべるでしょう?
こどもの頃に体験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
合唱コンクール、絵画コンクールなど・・・。
こういう例をあげると、身近に感じる人も多いでしょう。
 
それでは、大人のコンクールというと、どうでしょうか?
ピアノコンクール、バイオリンコンクール・・・・。
思い浮かべるのは、プロの登竜門、世界の舞台ではないでしょうか。
 
マンドリンも無縁ではありません。
国内でも、日本マンドリン連盟主催の『日本マンドリン独奏コンクール』が、隔年で開催されています。
『大阪国際マンドリンコンクール』も定期的に開かれています。
僕も何度も挑戦しました。
もちろん、いわゆるクラシック音楽としての素養と技術が求められます。
多くのマンドリニストが全国から集まって挑戦していたこのコンクール、このごろは参加者が減っているとのことです。
 

コンクールに出る意義とは?

コンクールに挑戦する意義とは何でしょうか?
その事を考えるときに、まず以下のことを振り返ってみないといけません。
 
『そもそも、自分がマンドリンを演奏する目的は何か。』
 
①とにかく仲間と楽しく演奏したいから
②なにか特技を身につけたいから
③モテたいから( ← 一応いれておきました)
④マンドリンという楽器で自分の限界に挑戦したいから
⑤とにかくマンドリンが圧倒的に好きだから
⑥あわよくばプロ、セミプロになりたいから
 
複数当てはまっている人がほとんどだと思います。
この中で、①〜③内におさまる人については、コンクールに出たいと思う人のほうが稀だと思いますし、オススメもしません。
 
ですが、④〜⑥があてはまる人については、挑戦を強くおすすめしたいです。
 
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まず、コンクールは、自分の限界にチャレンジするにはもってこいの機会です。
コンクールには課題曲と自由曲があります。
課題曲は、高い技巧を求めるものであることが多いので、これをクリアする事がまず限界への挑戦かもしれません。
そうでなくとも、自由曲で自分の限界に値する選曲をすれば、大変意義のある挑戦になるでしょう。
 
マンドリンをこよなく愛する人にとって、マンドリンの独奏という形を深く知るためには、コンクールはめったにないチャンスです。
何事も自分で体験して初めてわかることがあります。
是非、マンドリンファンの誇りと勇気をもって、挑戦していただきたいと思います。
 
最後に、プロへの登竜門としてのコンクールを眺めてみましょう。
はっきり言って、コンクールに入賞したからといって、自動的にプロになれるわけではありません。
僕自身、当時はほんの少しの幻想がありましたが、今は『他力本願な期待は捨てた方が良い』と言えます。
入賞歴があるだけでは、人は集まってきません。
ですが、全く効果がないわけではありません。
入賞歴があると、客観的な指標として役立ちます。
『あ、この人本気でやっているんだな』と思ってもらえますし、チャンスは増えます
そのチャンスをものにするかどうかが、自分の手にかかっている、ということです。
 
なかには、審査に疑問がある、という人もいるかもしれません。
また、プロ・セミプロを目指している人の中には『自分の音楽の方向性を考えれば、コンクールは自分に合わない』と考える人もいるかもしれません。
 
『どうせ、自分の独自のスタイルは、審査員の方々には受け入れられないし、出ても意味がない』
こう思って、出場のモチベーションが下がっている人がいるとしたら、その人達に以下のことを伝えたいです。
 

クラシック?!コンクール?

少し回り道ですが、僕の話をさせてください。
今僕がやっている音楽は、基本的にはクラシック音楽ではありません。(※たまにやりますけどね)
コンクールに挑戦していた頃とは、演奏スタイルも少し違いますし、求められるテクニックもかなり違います。
逆に言うと、僕が出した一つの答えである今のスタイルは『コンクール向き』ではありません
もし、今ふたたびコンクールに出場するとすれば、演奏スタイルを大きく変更するでしょう。
おそらく1ヶ月はかかる大工事になると思います。
それほど、僕の出した答えは、コンクールが導く方向とはかけ離れたものなのです。
 
そのことをふまえて、僕がコンクールに出場して得られたものは何だったのでしょう。
表面的に考えると、入賞歴という『ある程度の演奏技術を保証するレッテル』だけかもしれません。
 
でも、僕はそんなレッテルよりも大きなものを得たと自負しています。
それは、単純な話ですが『コンクールをこの身で体験した』ということです。
 
ただし、コンクールに出場することで、答えが出るとは限りません。
実際僕も、コンクール出場以降、長い間『自分の音楽とは一体何なのか』と悩んできました。
たしかに、コンクールに出場していなかったとしても、最終的には今と同じようなスタイルに行き着いているかもしれません。
しかし、そこには誤魔化せない違いがあるでしょう。
 
『深みと重み』です。
 
同じような音楽を演奏していても『深み』がまるで違う事があります。
技術的には同じように模したとしても、その違いはワンフレーズも聴けばわかります。
そして、その『深み・重み』は、次の事で決まります。
 
『これまで、音楽に対してどれだけ、真剣に考えてきたか。またその時間が長いか。』
 
 
(この記事をここまで読んでいる人であれば、音楽を真剣に考えていない人はいないでしょう。
おそらく、言っている意味もある程度はわかっていただけると信じています。)
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既にこれまでに散々悩んできて、挫折を何度も経験し、進むべき道がはっきり分かっている人が『自分にコンクールは合わない』と思うのであれば、それはもう出場する意味はないでしょう。
でも、まだ何か自分の知らない世界を心のどこかで求めているのであれば、コンクールは絶対に挑戦すべきです。
 
挑戦の過程で、挫折は必ずあると思います。
弾けなかったとしても、世界はひっくり返りません。
コンクールはプロのコンサートではありません。
失敗したらまた次回頑張れば良いのです。
 
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
みなさまが何かへ挑戦する姿、かげながら応援しています。
 

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