気づけば、2025年も残りわずかになりました。
少し早い気もしますが、この一年を静かに振り返ってみたいと思います。
二冊の本と一つの発明品
今年を大まかに振り返ると、本当にいろんなことがありました。
中でも自分にとって大きなアウトプットは、二冊の本を書き上げたこと、そして Cantareel を生み出したことです。
一見するとまったく別の領域に思えるこの二つの取り組みですが、振り返ってみれば、実は深いところで結びついているように感じます。
書いた二冊の内容は、ひとつは「脳内思考をていねいに分解して観察する本」、もうひとつは「人間と社会との関わりを言語化する本」。
こう表現するとまったく異なる趣旨のものに見えます。
しかし、この二つの視点を徹底的に言語化していくことで、私自身と社会をより客観的に、よりクリアに眺めることができるようになりました。
そのプロセスを通して、「自分は何に向かいたいのか」というミッションが以前よりもハッキリと見えてくるようになりました。
その結果、“新しい体験を届ける” という根っこにあったテーマが一段とクリアになり、アイデアの着想から完成まで迷いなく、ブレることなく進むことができたように思います。
もし、本を書くというプロセスを経ていなければ、Cantareelは生まれていなかったかもしれません。
海を越えて響く音
Cantareelの発表から数か月が経過しましたが、最近私の想像を大きく超える出来事がありました。
Cantareelが海を渡り、海外アーティストたちの手に届き、様々な音楽が生み出されているのです。
たとえば Social Repose(Richard McLean Giese)。
彼の演奏はとてもハーディガーディ的で、私自身はあまり試してこなかったアプローチです。
でも、そこで紡がれる音はハーディガーディよりもずっと豊かで美しいし、彼の歌声に何の違和感もなく溶け合っている。
音楽に対するリスペクトにあふれているし、彼がCantareelを演奏するのはまるで必然だったかのような自然さがそこにあります。
@matthewhealy22 @the1975
そして The 1975 の Matty Healy。
彼の音選びや音遣いは、ひたすら繊細で、感情がそのまま波紋のように音に乗って広がっていきます。
当然ですが、私はこれほどの感情のニュアンスを表現できません。
私自身が生み出した道具を通じて、こんなにも美しい音楽が生まれていることに、ただただ感動しました。
もちろん、彼らが有名アーティストだから嬉しいのではありません
遠く離れた地で、私の想像を遥かに超える音楽が生まれている――そのこと自体が、胸を熱くさせるのです。
Cantareelは、音と創造のバトン
実は、昨年から私は大きな壁に当たっていました。
正直なところ、過去の発明品を振り返るたびに「これ以上のものを作れるのだろうか」という不安がずっとあったのです。
でも、二冊の本を書き終えたあとにCantareelが生まれたこと、そしてそれが海の向こうで美しい音楽を生み出すトリガーになっていたこと。
それらは、私にとって “限界の扉が開いた瞬間” でした。
私はワガママな人間なので、いつだって世界は自分の想像を超えていてほしいと思っているし、それを実現するのはAIではなく人間であってほしいと思っています。
今回、Cantareelが私の手元からはなれ、素晴らしいアーティストたちの元に届き、彼らの新しい音楽を生む意欲につながった。
海を越えた音のつながりが、人間の創造を拡張した。
やはり、世界は自分の想像を超えてくれたのです。なんと素晴らしいことでしょう。
人間の創造は無限大
私は今年ずっと、「人間は果たしてどこまで戦えるのだろうか?」という悩みとも向き合っていました。
しかしいま、当時よりも少しだけ強く、前へ進んでいける気がしています。
世の中ではAIの進歩を前に「もう人間はいらないのでは」という声が聞こえることもあります。
しかし、遠くの誰かがCantareelで紡いだ音を聴いていると、やはり「人間の創造の可能性はまだ尽きない」と強く思うのです。
Cantareelから、そしてCantareelで新しい音楽を生み出してくれたアーティストの方々から、また一歩、前へ進む勇気をもらいました。
本当に感謝しています。
来年のことを明確に定めているわけではありませんが、方向を固定しすぎずに、自分自身を自由に泳がせていこうと思います。
大事なのは、止まらずに前に進むこと。今年もらった勇気があれば、きっと大丈夫です。
ありがとうございます。
