電源を使用せず、ギターやウクレレの中に入れるだけでコンサートホールのようなリバーブを発生させる装置『natu-reverb(ナチュリバーブ)』が発表されました。
公式サイト: https://logicwave.jp
あまり大きく発表していませんでしたが、これを開発したのは私です。
2022年3月10日に発表して以降、ありがたいことに予想を大きく上回る反響をいただき、現在は追加生産中のため販売を一時停止しております。(おまたせしてすみません)→現在は、不安定ながらも在庫が回復しております
今日は、私がナチュリバーブを開発した目的と経緯について説明いたします。
ちなみにこのプロダクト、楽器を弾くのが本当に楽しくなります。
私自身、ナチュリバーブの開発途中から、以前よりもギターやウクレレを弾くのが楽しくなり、演奏する時間が大きく増えました。
見た目と構造がシンプルなので眉唾物の印象があるのでしょうか。身近な友人に試してもらうと皆「え!?こんなにリバーブかかるの?」と驚きます。また、既にご利用いただいているお客様からも多数の反響をいただき、とても嬉しく思っています。
ところで、このブログを普段ご覧になっていない方も多いかと思いますので、まずは簡単に自己紹介させていただきます。
私は、マンドリン奏者/作曲家なのですが、ギターやウクレレなど様々なアコースティック楽器を演奏します。今は違いますが、以前は専業でミュージシャンをしておりました。
ここ数年で強く感じていること
コロナ禍によって、人々の生活様式や時間の使い方が大きく変わりました。
その中で、私は「幸福の定義」や「時間の価値」について改めて考えるようになりました。
コロナ禍は決して歓迎されるものではありませんが、私にとっては、ある意味でこれらを考えるチャンスとなったように思います。
その結果、『世の中の幸福値の総和を上げたい』と考えるようになりました。
幸福値の総和を上げるというのは、自分も含め、いかに多くの人の幸福の度合を高められるか、ということです。
ちなみに幸福というと大げさになりますが、「楽しい」などのポジティブな主観的感覚を持てるだけで十分だと思っています。
当然ながら、まずは自分のことを考えました。
特に音楽は、他人の前に自分が楽しむことから始まると思っています。
でもすぐに、自分の幸福値を大きく高めることは難しいいう結論に至りました。
なぜなら、自分はすでに幸福だと感じているし、音楽も十分楽しんでいるからです。
特に2013年に公務員を辞めてミュージシャンとして独立し、全国を周って各地の方々と交流していた数年間は本当に楽しかったです。
もちろん今も素晴らしい仲間と音楽を楽しんでおり、これ以上楽しくなるのは難しいと感じています。
そして次の考え方に至りました。
自分より、他の人の楽しい時間のほうが伸びしろが大きい
他人の楽しい時間を増やす
他人の楽しい時間を増やすことは、ミュージシャンとしてステージに立っていたときも意識していました。
しかし、私のパフォーマンスでは他人にさほど大きな影響を与えることができないとも感じていました。
大谷翔平選手がホームランを打てば日本中が湧き、何千万という人々にポジティブな感情を与えます。
マイケルジャクソンはステージに現れただけで、ファンを失神させました。
お笑い芸人がテレビでギャグを一つ放てば、何万人という人々の明日の活力になるでしょう。
私は彼らのようにはなれなかったわけですが、楽しい時間を提供できる何か別な方法があるはず…。
そうだ、楽器体験をグレードアップする、あるいは楽器体験を拡張することはできないだろうか?
要するに、自分自身のパフォーマンスで人々を楽しませるのではなく、人々が楽しむのを支援すれば良いのではないか、と考えるようになりました。
楽器の楽しさを拡張したい
例えば、1日に平均15分演奏する場合、20年間で1833時間…日数にして76日になります。
この時間の充実度を高められる方法があるとしたら、それはとても素晴らしいことなんじゃないか…?
あるいは、5分しか演奏しなかった人が1時間演奏するようになったら、20年間で6700時間、約280日分の楽しい時間が追加されることになります…!
これってすごく価値のあることなんじゃないか?!
この時点で自分の中で『楽器の体験価値を高めるものを提供したい』という考えが確立しました。
楽器の体験価値を高めたい
そして一昨年前、12年前から構想していた無電源スプリングリバーブのことを思い出しました。
12年前、ニューヨークにいた頃にRECITALBOXという商品に出会いました。
確かドイツのメーカーによるもので、スプリングの入ったボックスをギターのトップに設置してリバーブを生じさせるものでした。(現在は販売されていない模様)
この商品はとても面白かったのですが、表面板に取り付けて使用するため、プレイアビリティ、ルックス、サウンドともに私には十分満足できるものではありませんでした。
その時に感じた課題を思い出しながら、理想のリバーブを頭に描き、一昨年前からナチュリバーブの開発に取り掛かりました。
開発プロセスはここでは詳しくは明かせませんが、特に演奏性とサウンドには妥協なく取り組んできました。
実は、開発当初はマンドリン用を想定していたのですが、複数の課題が発見されたため、ギター用とウクレレ用が先に生まれた経緯があります。
創業67年のバネ工場とともに1本1本細かい調整を繰り返したり、試作品のブラインドテストをしては改良を重ねたり、振り返れば複雑な道のりでした。
多少の偶然の産物もありましたが、何より仲間に支えられ、natu-reverbはこの世に生まれたのです。
natu-reverbの未来
natu-reverbは、まだ多くの可能性を秘めています。
異なるリバーブ感のバリエーションも検討したいと思っていますし、ソプラノウクレレ用も多くのご要望をいただいています。
企画の出発点であったマンドリン用のナチュリバーブも、なんとか世に出せるレベルまで改善したいと思っていますし、natu-reverbから派生して別のプロダクトも検討していきたいとも考えています。
まだ世に浸透していない未知のプロダクトにも関わらず、natu-reverbをご利用いただいている方には本当に感謝しています。
これからも楽器の体験価値を高める、あるいは楽器体験を拡張するプロダクトを開発していきたいと思いますので、何卒よろしくおねがいします。
補足:
余談ですが、ナチュリバーブについて「自作できそう」とおっしゃる方が散見されます。
販売・頒布すると特許侵害になりますが、個人で楽しむ目的であれば、参考にしていただいての自作は自由です。
…が、あまりお勧めはしません。私自身、開発が本格化する以前はホームセンターのあらゆる材料で試しましたが、満足のいくリバーブには遠く及びませんでした。(おそらく費用と手間だけが膨らんでいきます…)
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